ファシア(MPS、トリガーポイント)

ファシアとは

Fasciaの定義は国際的にも議論中です。

1つは「筋膜Myofasciaに加えて腱、靱帯、脂肪、胸膜、心膜など内臓を包む膜など骨格筋と無関係な部位の結合組織を含む概念であり、その線維配列と密度から整理される。」であり、もう1つは「鞘、シート、あるいは剖出可能な結合組織の集合体で、裸眼で肉眼的に確認可能な程の大きさがある。そして、fasciaは皮膚と筋の間、筋周囲、末梢神経と血管をつなぐ、それら関連構造をも含む。」です。

現在、上記2種類のFasciaの定義を融合させるための議論が進んでいますが、統一見解には至っておりません。

また、Fasciaの適切な日本語訳は現時点ではありません。

そのため、当会では英語で「fascia」あるいはカタカナで「ファシア」と表現しています。

本邦ではFasciaは「筋膜」、時に「膜」と訳されてきた経緯があります。

一方、Fasciaの意味で「筋膜」と表現されている場合もあります。

医学用語としては、筋膜は「myofascia」、膜は「membrane」です。

日本解剖学会の解剖学用語改訂13版には、Fasciaは筋膜Myofasciaを超えたものと説明されており、整形外科学会の整形外科学用語集(第8版)では「筋膜、あるいは腱膜」という言葉があてられています。

建設的な議論を進めていくためにも、言葉の定義を厳密に確認することが極めて重要になります。

筋膜性疼痛症候群(MPS)とは

筋膜性疼痛症候群(きんまくせい とうつうしょうこうぐん、Myofascial Pain Syndrome:MPS)は、Myofascia=筋肉を包む膜「筋膜」の異常から起きる、痛み・シビレのなどの症状を起こす疾患です。

日本では筋痛症とも呼ばれることもあります。

この病気は1980年代にアメリカで『Travell & Simons’ Myofascial Pain and Dysfunction: The Trigger Point Manual (筋筋膜性疼痛と機能障害: トリガーポイントマニュアル)』(Janet G. Travell 医師とDavid G.Simons医師の共著)という医学書にて発表されました。

通常、我々が急激に重い物を持ったり、無理な姿勢等により繰り返し筋肉に負荷をかけると筋肉に微小損傷が発生します。いわゆる筋肉痛の状態です。通常、この痛みは数日程度で自己回復をします。

筋膜性疼痛症候群(MPS)では一般的な筋肉痛とは異なり、痛みやしびれの強さが相当激しいものになり、更に痛みやしびれの範囲が広範囲に発生します。

トリガーポイントとは

トリガーポイントTrigger pointは、過敏化した侵害受容器という生理学的観点の名称であり、形態表現の1つとして筋硬結があるに過ぎません。

臨床でも、トリガーポイントは筋膜上のみならず腱・靭帯・脂肪・皮膚などの結合組織に広く存在し、筋膜以外も治療対象となることは広く知られています。

そのため、“トリガーポイント=筋硬結Muscle nodule という理解は正確ではありません。

一方、Fasciaは解剖学的観点の名称です。トリガーポイントは、侵害受容器など痛みのセンサーが高密度に分布しているFasciaに優位に存在している可能性が示唆されています。

痛いところが本当に悪いところ??

筋膜性疼痛症候群(MPS)やトリガーポイントの複雑なところは、「痛みを感じる場所が痛みの原因ではない事」です。

私たちが指を切ったり、骨折したり、捻挫をしたりすると「痛みを感じる場所=痛みの原因」と、当然分かりますが、筋肉や内臓の痛みの場合は少し違っています。

「痛みを感じている場所」と「痛みの原因」が一致していないことが多いのです。(70%は一致しない)

筋肉の痛みの特徴

症状が出ているところだけ治療しても結果が出ないのは、この筋肉の痛みの特徴により、治療しているところにズレがあるからなのです。(※腱、靭帯の痛みなどは例外があります)

痛みを感じている場所に囚われず、痛みの原因となる場所を正確に探しだすことが重要になります。


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